チャオプラヤ川のほとりに佇むオリエンタルホテル。いつかここに泊まってみたいと思わせたのは映画サヨナライツカでした。

タイや東南アジアの熱気は人々に夢を見させてくれる。数年前にしばらくの間ベトナムに住んでいた私にも、目をつぶればその時の情景が浮かんできます。

初めてベトナムを訪れた時、空港からホテルに向かうタクシーの中で忙しく周りを見渡しながらこれからの暮らしに胸を躍らせた。真っ白な地図にいろんな場所を見つけては訪れ、毎日が新しい発見と刺激に満ちていました。

この映画サヨナライツカの後半に、ミュージシャンを夢見て家を飛び出していた主人公・東垣内豊の息子はライブでこう言いました。

若者は夢を見て、老人は回想する。
俺は夢をみて、あの人は夢から覚めろといいました。夢を失い、いつの間にか老人になってしまったあの人にこの歌を捧げます。
若者は夢を見て、老人は回想する。
はじめてこの映画を観た時はまさに熱気に包まれ夢に向かってひた走っている時だったと思います。それから時が流れて久しぶりにまたこの映画を観てみると全く違った感想を持ったのでした。
夢は叶うか否かよりも夢に向かう過程が、かけがえのない思い出になるのだなーと。

今はあの時思い描いていた未来とは違うけれど、たしかに何かに向かって突き進んだその経験や思い出が私を満たしてくれています。いや、まぁ結構大変だったし辛いこともたくさんあったんだけど。笑
叶わなかったことを嘆いたことは一度も無いけれど、叶わなかったことを嘆いて「老人は回想する」のではなく、回想できるほどの体験ができたこと自体が素晴らしいことなんじゃないかと思いました。
もしまだそんな体験の渦中にあるのであれば、若くても年老いていても、それを回想できるくらいにやり切れたら素晴らしいことですね。